SEANです。
フィリピンへの投資を推奨する時に言われていることのひとつに、OFW OVERSEAS FILIPPINO WORKER 海外出稼ぎフィリピン人からの送金、ということがあります。
確かに、約1000万人のOFWがいて、2017年の送金額が約270億ドル(これには、OFW以外のフィリピン人からの送金も含まれるのですが、イコールではないですが、近い数字と考えてよいかと思います)ですから、約3兆円が出稼ぎしている人からの送金ですから、大きいです。
でも、一人当たりにしたら、約30万円です。月給換算したら、2万5千円です。
現地でもらう給料=送金額ではないでしょう? と指摘を受けそうですが、私が聞いている範囲では、家族のために働きに出ているOFWは、給料の殆どを送金しています。
住み込みのメイドであれば、食事は支給でもちろん住まいもありますから、生活費は殆ど掛かりません。
そして、これもヒアリングした内容ですが、メイドやレストラン等の仕事の給料は、大体、どこの国でも月額400ドル~500ドル程度。
これはペソ換算すると、20000ペソ強といったところで、確かに、フィリピンでこの給料がもらえる仕事に就くためには、最低、大学は出ている必要があるレベルですので、その点では好条件と言えるかもしれません。
給与水準が比較的高く、仕事の機会が多いメトロマニラ(最低日給500ペソ)と異なり、300ペソ程度しかもらえないミンダナオの人からしたら、仕事にありつけて、さらにマニラよりも高い給料がもらえるのは魅力的だとは思います。
然しながら、当然ながら海外出稼ぎですから、フィリピン人が一番大切に考えている家族とは離れ離れの生活になります。一番近い香港に奥さんが出稼ぎに出ている知人がいますが、出稼ぎに出てから3年経過して、フィリピンに帰省できるのは年1回だけだそうです。香港の法律で2年に1回は雇用主が帰省費用を負担する必要があるのですが、それ以上は自己負担となるのです。金銭的には非常に厳しいけれども、愛する家族とは会いたいから、何とか航空券を購入して帰国してきます。
香港やシンガポールなら近いですし、文化の違いも極端ではありませんが、最近のOFWの行先は圧倒的に中東が多くなっています。そうなると、まずは宗教が全く異なり、敬虔なカソリックが多いフィリピン人にとっては非常に厳しい環境となります。
また、数か月前、とある中東の国のOFWが雇用主に殺害された事がフィリピン内で社会問題になりました。一時、フィリピンが帰国費用を負担して、救援機を派遣する事態にまでなりました。
ですから、多くのフィリピンの人の正直な気持ちとしては、国内にそれなりの給料がもらえる仕事があれば、海外に出たくはない、というのが現実だと感じています(例外なのは、もしかしたらお世辞なのかもしれないですが、GRABのドライバーで時折、日本の工場で働いていた人の話を聞きますが、ヴィザが下りるなら、日本にはまた行きたいなあ、という声はありますね。)。
さらに、OFWの多くは、いわゆる単純労働で、代替の労働者が他に沢山いて、昇給は殆どありません。つまりは、次第に高齢になっていっても、もらえる給料は殆ど上がらないのです。
20代、30代の若くて元気なうちは大丈夫でも、いずれ、病気になりやすい年齢になってきたら、帰国せざるを得ない。帰国しても、特筆すべきスキルは身についていなくて、若い人に取って代わられるわけ、です。
このような現実があるので、OFWからの潤沢な送金がフィリピン経済を力強くけん引、といったトークだけでフィリピンへの投資をするのは、慎重に考えた方が良いと考えています。